風俗

初恋は夏のまぼろし

初恋をした、その日はカンカン照りでした。
中学生の私は汗をぼたぼたと滴らせながら道を歩いていました。
田舎道で、周囲は田んぼや畑ばかりで、日陰になるような建物は何もありません。
真夏の太陽が頭をジリジリと焦がすように照りつけていました。
うつむいて歩いていた目線をあげると、前方に若い男の人が立っていました。
その男の人は、いかにも都会の人という感じの垢抜けた髪形と服装でした。
そして、日傘を差していました。
私は衝撃を受けました。都会では、男の人でも優雅に日傘を差すのだろうかと、本当に驚きました。
一目ぼれでした。初恋でした。
でも、その初恋は一瞬にして冷めました。
男の人には連れがいました。私には見えていなかったおばさんが、畑の中にしゃがんでいたのです。おばさんが立ち上がり、男の人から日傘を受け取って、二人は並んで歩き始めました。日傘は都会の男のアイテムではありませんでした。おばさんのものだったのです。
それから、男の人がおばさんのことを「母ちゃん」と呼ぶ声が聞こえました。私と同じ、洗練とは遠い田舎の人間の話し声でした。
私の初恋は一体何だったのかと思いました。本当に、一瞬のまぼろしみたいな初恋でした。